会長挨拶
第31回日本エイズ学会学術集会・総会
会長:生島 嗣(特定非営利活動法人 ぷれいす東京代表)
「HIV陽性の人も、陰性の人も、どちらかわからない人も、一緒に生きている」というリアリティを共有するためのキャンペーン「Living Together」を、私たちが始めたのは2002年のことです。これは、エイズ対策において、HIV陽性者へのケアとHIVの感染予防は車の両輪として必要であり、当事者の参加が重要であることを伝えるメッセージでもありました。
2012年7月、米食品医薬品局(FDA)は既存の抗HIV薬を、感染を防ぐための薬としても承認しました。予防効果を裏付ける研究は承認後にも発表され、日本国内でもPrEP(曝露前予防)に対する関心が、次第に高まっています。UNAIDS(国連合同エイズ計画)は、PrEPを予防の選択肢の一つとして位置づけるとともに、他の性感染症の予防が後退しないよう、情報を発信する必要性も指摘しています。PrEPをめぐる動きは世界中に広がっており、アジアでもトライアルを開始する国がでてきています。
日本の現実のなかでPrEPをどのように位置づけるかの検討には、個人がHIV検査を地域で安心して受けられることと、医師の見守りのもとで薬が処方される環境も必要です。さらに、こうした費用を誰に対して、どこまで負担するかを、様々な立場の人が参加し、積極的に議論する必要があります。
しかし国内では、HIV/エイズへの社会の関心はむしろ低下し、メディア等での報道も減っているのが現状です。多くの人がHIV/エイズに対しては今もなお、怖い病気のイメージを持っているのではないでしょうか。
こういった環境は、HIV陽性者が病気のことを周囲に伝えにくくしています。当事者や周囲の人は大きなストレスを抱え、またHIV検査を受けたことがない人にとっては、検査行動の妨げにもなっています。人権の尊重とケアへのアクセスを保障するという観点に加え、より効果的な予防対策の実現を目指す意味からも、HIV/エイズへのスティグマの解消が必要です。
本会議では、HIV/エイズを通じて映し出される社会の課題、就労問題、介護や精神保健領域へのケアの連続性といった課題を解決するために、医療従事者、研究者、行政、NGO/NPO関係者、HIV陽性者など、立場を超えて語り合いたいと願っています。「未来へつなぐケアと予防 Living Together」というテーマには、大きな転換期を迎えつつある今だからこそ、あらためて考え、共有しておくべき核心が含まれているものと信じます。皆様の積極的な参加をお待ちしています。
部門長挨拶
基礎部門
第31回日本エイズ学会学術集会・総会
基礎部門長:俣野 哲朗
本学術集会の基礎部門では、まず、基礎・臨床・社会の三者間のより深い相互理解への貢献を目指し、二人の海外演者を招聘して特別講演を企画しました。お二人の講演は、基礎研究者にはもちろん、臨床や社会に携わる方々にも興味深いものであると考えており、基礎研究への理解を深めていただければと思っています。
一方、シンポジウムでは、国際的にも高い評価を得ている国内基礎研究者にご講演いただき、ワークショップおよび一般演題では、純粋なBasic ResearchからTranslational Researchまで、幅広く高度な議論を想定しています。これらが、今後のHIV研究のさらなる発展につながることを期待しております。
臨床部門
第31回日本エイズ学会学術集会・総会
臨床部門長:岡 慎一
HIV治療薬は、格段の進歩をとげました。現在の治療は、インテグラーゼ阻害薬+逆転写酵素阻害薬2剤による併用療法が主流になっています。しかし、実臨床の場では、以外に副作用が多く未だ完全に満足できる状態ではないことが、明らかになってきました。今回のエイズ学会の臨床部門では、こういった実臨床の経験をお互いに討議し合う場になるのではないかと期待しています。
また、今回の臨床部門のプレナリーは、タイのKiat博士にお願いしました。アジアでは、タイはいわずと知れたHIV治療の最先進国です。Kiat博士は、そのタイでHIV治療を牽引してこられた世界的に有名な臨床家です。タイの治療の現状と予防がどうなっているのか、お話しが非常に楽しみです。
プログラム委員
* 部門長/部門長以外は、五十音順 | |||
基礎分野 | * | 俣野 哲朗 | 国⽴感染症研究所 エイズ研究センター |
石井 洋 | 国⽴感染症研究所エイズ研究センター | ||
浦野 恵美子 | 医薬基盤・健康・栄養研究所霊⻑類医科学研究センター | ||
貞升 健志 | 東京都健康安全研究センター | ||
佐藤 裕徳 | 国⽴感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター | ||
武内 寛明 | 東京医科⻭科大学大学院医歯学総合研究科 | ||
増田 貴夫 | 東京医科⻭科大学大学院医⻭学総合研究科 | ||
松岡 佐織 | 国⽴感染症研究所 エイズ研究センター | ||
村越 勇人 | 熊本大学エイズ学研究センター | ||
吉村 和久 | 国⽴感染症研究所 エイズ研究センター | ||
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臨床分野 | * | 岡 慎一 | 国⽴国際医療研究センター |
池田 和子 | 国⽴国際医療研究センター | ||
今村 顕史 | がん・感染症センター 都⽴駒込病院 | ||
桒原 健 | 国⽴国際医療研究センター | ||
佐藤 知恵 | 東京医科大学病院 | ||
島田 恵 | 首都大学東京 | ||
鈴木 治仁 | 鈴木⻭科クリニック | ||
関根 祐介 | 東京医科大学病院 | ||
水島 大輔 | 国⽴国際医療研究センター | ||
矢嶋 敬史郎 | がん・感染症センター 都⽴駒込病院 | ||
山元 泰之 | 東京医科大学 | ||
四本 美保子 | 東京医科大学 | ||
鰐渕 智彦 | 東京大学医科学研究所附属病院 | ||
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社会分野 | * | 生島 嗣 | 特定非営利活動法⼈ぷれいす東京 |
稲場 雅紀 | 特定非営利活動法⼈アフリカ日本協議会 | ||
井上 洋士 | 放送大学 | ||
岩橋 恒太 | 特定非営利活動法⼈akta | ||
大木 幸子 | 杏林大学 | ||
沢田 貴志 | 神奈川県勤労者医療生活協同組合港町診療所 | ||
高久 陽介 | 特定非営利活動法人日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス | ||
藤平 輝明 | 東京医科大学病院 | ||
宮島 謙介 | 東京都福祉保健局 |